交流・体験等

【学習支援、交流・体験等】サンプレイス(とよなか国際交流協会)

居場所の基本情報

  • 開催場所:豊中市玉井町1-1-1-601エトレ豊中6階
  • 開催日時:毎週日曜日 13:00~15:00(第一日曜日は休み)
  • 参加費:無料
  • 参加受付方法:随時
  • 対象者:外国にルーツを持つ子ども(主に小・中学生)

ひとことメッセージ

外国にルーツをもつ子どものための居場所や日本語学習支援、学習支援。地域の子どもたちの国際理解のための活動をしています。

運営団体

  • とよなか国際交流協会

外部リンク

アクセス

  • 電話番号:06-6843-4343
  • メールアドレス:atoms@a.zaq.jp
  • 担当者:山根絵美

訪問レポート(2021年3月)

外国にルーツを持つ子どもが安らげる【ひだまり】のような場所

いこっとのWEB制作担当兼ライターの寺戸(てらど)です。

今回は、豊中駅にある複合施設「エトレ豊中」内のとよなか国際センターにて、外国ルーツを持つ子どもたちのための居場所「サンプレイス」を運営されている公益財団法人とよなか国際交流協会の山根さんにお話しを伺ってきました。

「多様性」「インクルーシブ」「ダイバーシティ」

企業活動でもこのような言葉が使われ、マイノリティと呼ばれてきた人々も活躍できる社会が到来したように思えます。今回外国ルーツを持つ子どもたちのことを伺って、まだまだ日本の社会制度は「多様性」と呼ぶにはほど遠いと感じました。

そんな子どもたちと真摯に向き合い、居場所を作っている活動の様子、ぜひご覧ください。

いこっとサポーターさんと取材に伺いました。

「今日は何したい?」からはじまる

てらど
てらど
今日はよろしくお願いします。

普段はどのような活動をされているか、教えてください。

山根さん
山根さん
学習支援もしているのですが、子どもたちが来たらまず「何がしたい?」と聞くところから始まります。毎回参加する必要もありませんし、時間途中での出入りも可能です。

卓球やゲームをする子たちもいたり、色々なアクティビティを用意しています。サンプレイスで初めて卓球に触れた子が、その後卓球部に入り、他の子どもに教えてくれていたりして、それはすごく嬉しく思っています。

てらど
てらど
子どもたちが思い思いに【自由に過ごせる場所】なんですね。

ただそのように自由な場所というのは、実は運用面では大変かと想像します。どのような経緯で現在のサンプレイスは始まっていったのでしょうか。

山根さん
山根さん
子ども向けの活動を始めた当初は学習支援が中心でしたが、どうしても教えることで支援者と被支援者の関係になりがちで…。子どもたちが自分に近い境遇のロールモデルを見つけられるような場所になってほしいと大学生を中心にした居場所づくりをしています。

大学生も現在13名のボランティアのうち5~6名は外国にルーツを持つ方です。サンプレイスを元々利用していたり、サンプレイスとは別に実施している母語教室の元参加者の方もいます。

てらど
てらど
大学生の方が運営しているんですね。他の居場所ではなかなか学生さんがボランティアに来てくれないという声も聞きました。

サンプレイスではどうでしょうか。

山根さん
山根さん
2006年頃から今の形で始めましたが、大学生のボランティア活動は代々引き継がれていってます。外国語学部の方もいるのですが、理系文系問わず色んな学部から来てくれています。

特にこの1年はコロナ禍で活動が制限される中にあったのですが、自分に何かできることはないかと例年より多くの学生さんが参加してくれています。

様々な国の言語で書かれたパンフレットが用意されています。

外国ルーツを持っているだけで、降りかかる様々な課題

てらど
てらど
外国にルーツを持つ子どもたちを取り巻く環境には、どんな課題があるのでしょうか。
山根さん
山根さん
見えにくい課題でいうと、学習言語の不足が見落とされてしまう、ということがあります。
てらど
てらど
学習言語、ですか?
山根さん
山根さん
言語には【生活言語】と【学習言語】があると言われています。生活言語は普段の話し言葉のことですが、学習言語は例えば「水」→「水溶液」、「四角」→「正方形」など教科学習等に必要とされるより抽象的・概念的な言葉です。

生活言語は身に付きやすいのですが、学習言語の修得は約7年ほどかかると言われています。授業ではノートにそのまま写せばよいですし、日常会話ができてしまっていると、学習言語の不足は見えづらく、見落とされることがあります。

てらど
てらど
そうなると、その後の進学や就職にも影響が出てきますよね。
山根さん
山根さん
さらに在留資格によっても制限がかかる場合があります。外国人は日本で生活したりするのに在留資格を持っている必要があるのですが、例えば家族滞在用の在留資格だと週28時間までしか働けません。

安心して将来設計ができないことも大きな課題の一つです。

てらど
てらど
外国ルーツを持つだけで、キャリアが築いていけないのですね。子どもたちの学習する権利、働く権利が守られているとは思えません。
山根さん
山根さん
また思春期になると、親御さんとの関係の中にも課題がでてきます。両親は母語でしゃべるけど、自分自身は日本語でしゃべるという状況もあります。自分のこと進路について相談できなかったり、親御さんのために通訳として駆り出されることもあります。

不用意に社会的な責任を負わされてしまう、いわゆる【ヤングケアラー】になってしまっている側面もあります。

てらど
てらど
外国ルーツを持つ子どもたちを取り巻く環境に、そのような課題があったなんて、恥ずかしながらまったく知りませんでした。
山根さん
山根さん
外国ルーツを持つ子どもたちも、日本の未来を創っている子どもたちであることに変わりありません。

「みんな違ってみんないい」という言葉があります。ただそれが今は「お飾りの言葉」であるというのは、子どもたちは分かっています。本当に違っていていいと【実感】できるような社会にしていかなければと思います。

サンプレイスを運営している場所でインタビューしました。陽が差し込んで暖かい場所です。

【ふっと、こぼれる声】をキャッチする

てらど
てらど
そんな様々な課題を持つ子どもたちに、どう向き合っておられるのでしょうか。
山根さん
山根さん
ボランティアのみなさんには【子どもの声をよく聞いてほしい】と話しています。居場所の運営は「ただ遊んでるだけ?」と思われることもあるのですが、子どもたちの本音がふっとこぼれたときにそれをキャッチすることが重要です。ボランティアさんが指導的になっている時には「ここは学校じゃないから」と伝えています。

とよなか国際交流協会の居場所運営の軸は3つ、①ボトムアップ②エンパワメント③双方向性。支援する側/される側ではなく、対等の立場でいることを大事にしています。

てらど
てらど
子どもたちから見える「本音」にはどういうものがありますか?
山根さん
山根さん
人生ゲームをしているときに言葉に詰まっていたなど「言葉に関する困りごと」、また「未来についてのビジョン」や「家族についてこんなことを話していた」などです。色々な情報を得られたら、スタッフを含めたミーティングで共有します。

そうやって、子どもたちの姿が立体化していきます。

てらど
てらど
学校や家では見せない子どもたちの姿から、色々な声を拾い、共有していくのですね。
とよなか国際交流協会のグランドルールです。

居場所運営者へメッセージ

てらど
てらど
最後に、居場所運営者の方にメッセージをいただけますか?
山根さん
山根さん
「とりあえず、やってみる」ということでしょうか。やってみた中で、自分たちが何を大事にするのか、見えていくと思います。

あとは来た子一人ひとりを大事にすることです。それが次へと繋がっていくのだと思います。

てらど
てらど
目の前の子どもたち一人ひとりを大事に。当たり前のようで、難しいです。だからこそ大事なのでしょうね。
山根さん
山根さん
活動の中で、何かが記憶に残っていて。急に居場所に戻ってきてくれることもあります。

成果という分かりやすいものではありませんが、想いのようなものが、その子の心の片隅に残る。それがとても大きな意味を持つのだと思います。

お話をしていて、しっかりと子どもたち向き合ってこられた様子が伝わってきました。

まとめ

今回のインタビューで、外国ルーツを持つ子どもたちを取り巻く環境には、様々な課題があることを知りました。我々は「多様性」と簡単には言いますが、現在の社会はまだその多様なルーツを持つ子どもたちの権利を守れているとはいえません。

サンプレイスは①太陽Sunのような温かさ、②開催日である日曜日Sunday、③サードプレイス第三の居場所という3つの「サン」の意味があるそうです。この暖かな陽だまりのような場所で、一人ひとりの子どもたち、そしてボランティアに想いを繋いでいっておられます。

この「いこっと」でも、居場所運営者の方々のそんな想いを、少しでも伝えていかなければと想いを新たにしました。

山根さん、お忙しい中丁寧にインタビューにお答えくださり、ありがとうございました!

山根さんといこっとライターの荒川さん、いこっとコーディネータのみなさんと。