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【訪問レポート】こんぺいとう

訪問レポート(2023年9月)

目指したのはプチ児童館

いこっとのWEB学生ライターの森島です。
今回は「みんなの広場 こんぺいとう」を運営されている望月さんを訪ねました。

活動を始められたきっかけやスクサポであることを活かした学校との連携、遊びの工夫について、インタビュアーの寺戸とお話を伺ってきました。

忙しい中、インタビューではざっくばらんに、たくさんお話しいただきました。

信頼・相談できる大人を周りにつくる

寺戸
寺戸
本日はよろしくお願いします。初めに、こんぺいとうさんの活動内容を教えていただけますか?
望月さん
望月さん
曽根西センターで毎週木曜日、夏時間13時30分〜18時、冬時間13時30分〜17時に開催していて、主に原田小学校の子どもたちが来ています。

始めたころは、17時までの開催だったのですが、授業が終わった後だと居場所に来れるのが16時くらいで、いられる時間が短くなってしまうので、18時まで時間を延ばしました。遅い時間帯には、近隣の中学生もきてくれます。最後までいる子に片付けを手伝ってもらっています。

寺戸
寺戸
子どもたちもきちんと片付けをしてから帰るというのは、とてもいいですね。13時など早い時間帯は、どんな子が来ているのですか?
望月さん
望月さん
13時など早い時間帯は、学校に行けていない子たちが来ています。私は小学校でスク―ルサポーター(*)として活動していて、居場所に来ている子たちとは顔見知りの関係なので、学校に行けていない子が来てくれます。スクサポとして活動しているのは小学校だけなので、中学校に進学すると関係が途切れてしまうのですが、広場があれば、来てもらうことができます。

*スクールサポーターとは…豊中市内の小中学校および義務教育学校において、児童生徒の学習面や生活面などに関わる支援。以下「スクサポ」。(市HPより)

寺戸
寺戸
スクサポとして活動されながら、さらに居場所を立ち上げるというのは非常にエネルギーがかかることだと思います。居場所を立ち上げられたきっかけを教えていただけますか?
望月さん
望月さん
発達障がいを持つ子どもたちの母親3人で、この居場所を立ち上げました。皆、障害者手帳を持たない軽度の発達障がいの子を育てています。
私たちは、子どもたち(障がいを持つ子たち)の将来が心配で、年齢が小さい内に、社会人になって役に立つスキルや相談できる大人を作ることが大事だと思っています。

また、発達障がいのあるなしに関わらず、信頼できる大人を周りに作ってほしい、何かあった時に相談できる場所を作りたいと思って居場所をスタートしました。

寺戸
寺戸
信頼できる大人を周りに作ることは大事ですね。ちなみに「こんぺいとう」という名前にはどんな由来があるのですか?
望月さん
望月さん
発達障がいのことを「発達でこぼこ」と呼ぶことがあります。「凸凹(でこぼこ)」って「こんぺいとう」みたいだよねということから、名付けました。「居場所」という言葉はよく使われるようになった反面、色んな捉え方をされるようになったので、「居場所」ではなく「広場」にしたんです。
寺戸
寺戸
なるほど、そのような由来だったのですね。

学校とも連携・協力し、放課後の様子を伝える

寺戸
寺戸
先ほど、小学校でスクサポとして活動されているというお話がありましたが、子どもたちの様子をもう少し詳しく聞かせていただけますか?
望月さん
望月さん
はい、発達障がいだけではなく、家庭的環境の課題を感じています。共働き家庭が多く、学校で見ていても、新しいノートを持ってくることができない子もいます。親が買い忘れているとかではなく、買う時間がないんですよね。
寺戸
寺戸
私自身が共働きなので、子どもと接する時間が少なくなったり、学校の対応が難しかったりすることがよくわかります。
望月さん
望月さん
そんな些細なことが積み重なって、子どもが学校と親との板挟みにあってしまっている場合があります。

学校だと限られた時間の中で、関われるクラスは4つほどしかありません。学校ではなかなか関わる時間がないけど、広場があれば、来てくれた子には関わることができます。「先生(スクサポである望月さん)がやっているよ」と、口コミで広がっています。ぽろっと日常のことを話してくれたり、話すことによって気持ちを落ち着かせていきます。

寺戸
寺戸
スクサポであることを活かして、学校と連携はされているのでしょうか?
望月さん
望月さん
毎回居場所の参加者名簿を必ず小学校に提出するようにしていて、その日あった出来事と併せて学校と情報共有をしています。
寺戸
寺戸
放課後の時間と学校の連携が取れているのは、とても重要ですね。

安全に、自分を表現する場をつくりたい

寺戸
寺戸
スクサポや広場での活動を通じて、見えてきたことはありますか?
望月さん
望月さん
自己表現が苦手な子が多いです。困っている子を学校の中でみるのですが、なかなか「困っている」という自己表現ができません。そうすると、どんどん「困った子」になってしまうんです。スクサポとして学校で関われるのは、「最も困っている子」だけ。だけど、あの子もこの子も、気になってしまいます。
寺戸
寺戸
学校だと、時間が限られていますもんね。
望月さん
望月さん
私たちが子どものころは、もっと危険なこともいっぱいしていましたよね。

今は、安全が優先され、なんでも予防線を張るようになっています。本音を言えば、多少危ないことも含めて、やりたいことをやって学んでほしい気持ちもあるのですが、やはり居場所運営者として、ケガをしない程度に止めないといけないことが、もどかしいです
冒険やドキドキをみんなで積み重ねながら、限界やケガの限度をわかってほしいんですよね。大学生になると、いきなり自由がやってきますが、そこで自由になっても、挑戦できる子は少ないです。

寺戸
寺戸
「安全」と「挑戦」、難しい壁ですね。
望月さん
望月さん
そうなんです。危険なことは難しいので、せめて自主的にできることをどう見つけていけるか、かなと思っています。これは小さいうちからの積み重ねが大事です。小学校2~3年生のあたりが壁になってきて、大きく後に影響してきます。学習も、自分で考えるような内容になってくるので、小さい時のスキルだけでは乗り切れなくなってきます。
寺戸
寺戸
日々のチャレンジの積み重ねのなかで、自分で考えることが大事になってくるんですね。
望月さん
望月さん
友だちと宿題できるような場所が校区内に少ないと感じます。保護者も日中家にいないことも多いので、自分の家に友達を連れてきて家で遊んだり、勉強したりもなかなか出来ません。

「この部屋(こんぺいとうをやっている場所)で宿題をやっていい?あとから〇〇くんが来るから、来たら呼んでね。」と話しかけてくれた子がいました。「2時間の自由に遊べる時間に、宿題をやってえらい!」というと、「宿題が苦痛なわけではなく、みんなでワイワイしながらやりたい。だからここで宿題がしたい。」と話してくれました。

友だちとの会話や異学年交流から学ぶ

寺戸
寺戸
広場で子どもたちは、どのように過ごしていますか?
望月さん
望月さん
こんぺいとうはプチ児童館を目指しています。小学生は基本的に、校区外には行けないので、なかなか放課後に過ごせる場所がない上に、図書館もありません。なので、漫画や本を300冊くらい置いています。
寺戸
寺戸
300冊も!まるでミニ図書館のようですね。
望月さん
望月さん
できるだけ、話題になっている漫画や本などをおくようにしています。一人で過ごしたい子はじっと本を読んでいます。
寺戸
寺戸
遊び道具も工夫されていると聞きました。
望月さん
望月さん
はい、こんぺいとうでは、iPadやSwitchなどの電子機器(テレビゲーム)を禁止にして、電子機器から離れて「コミュニケーションをとる」ことを大事にしています。友だちとの会話や異学年交流の中で、自分自身の言語化を図り、コミュニケーションスキルを上げていってほしいです。

遊び道具は、ボードゲームや人狼、人生ゲームなど、認知能力を育むようなゲームを中心に置いています。子どもたち自身でルールブックを読んで、ルールを理解しながら遊ぶということを大切にしています。ボードゲームをする中で、「友達を応援する、悔しい気持ちを感じる」といったコミュニケーションを学んでほしいと思っています。

寺戸
寺戸
応援したり、悔しさを感じるといった経験は、とても大切ですね。
望月さん
望月さん
画用紙や鉛筆があったら絵が描けます。漫画の絵が描きたいという子もいて、漫画クラブのようになっています。狭い空間ですが、静かに絵を描ける場所を確保してあげたいなぁと思っています。

子どもたちの期待に応えるために、続けるということ

寺戸
寺戸
何か運営の中で、困っていることなどありますか?
望月さん
望月さん
居場所で見守りをしてくださる大人を大募集しています。居場所を立ち上げて半年が経ちましたが、「資金・場所・人的資源」、どれも十分とは言えないです。1人1人に対して、「見られる目」が欲しいなぁと思っています。
子どもたちが相談しやすい環境、子どもたちに寄り添える環境を作っていきたいなと思っています。お手伝いいただける方がいらっしゃいましたら、ご連絡をお待ちしています。
寺戸
寺戸
最後に、これから居場所を立ち上げたい方へのメッセージをお願いします。
望月さん
望月さん
私たちには待っている子どもがいるので、居場所を始めてしまうと、なかなか止まることはできません。子どもの信頼を得る活動を始めたのですから。

居場所を始める際は、3年先にどうなっているか、仕組みも含めて考えてから、始めてほしいなぁと思います。やり始めたら必ず苦悩はついてきますが、待っている子どものために頑張って活動を続けてもらえたらなと思います。

まとめ

実際に小学校の現場でスクサポとして関わられている望月さん。子どもたちと関わる中で見えてきたことや、ご自身の経験から、「信用できる大人を周りに作ってほしい」という思いを持って活動されています。

広場の活動でも、本をたくさん置くことや遊び道具にも工夫されて、「コミュニケーションの中から学ぶ」ことを大事にされているというお話が印象的でした。
たくさんの感情を抱くことや体験の中で、自分自身を表現できるようになってほしいという思いが伝わってきました。

望月さん、お忙しい中インタビューに答えていただき、本当にありがとうございました!

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