訪問レポート(2023年11月)
はじめに
いこっとのWEB学生ライターの森島です。
今回は「みんなの居場所」を運営されている日下さんを訪ねました。
放課後のすごし場として活動をスタートされ、今では、学習支援、子ども食堂と活動を展開されています。
活動を始められたきっかけや、子どもや親御さんとの関わり方、居場所活動の広がりや今後についてお話を伺ってきました。
子どもたちの手作りポスター。当日はいこっとサポーターによるバルーンアート作りが行われていました。
地域みんなの頑張りを寄せ集め、地域で支える「子どもの居場所」づくり
寺戸
今日はよろしくお願いします。はじめに居場所の活動内容について教えていただけますか。
日下さん
上野会館で、毎週水曜日に小中学生誰でも来れる居場所を運営しています。だいたい20人前後の子どもたちがやってきます。昨年9月からは、月末の金曜日に子ども食堂を、11月からは、毎週木曜日に高学年向け学習サポートの居場所もはじめました。
寺戸
居場所の活動からスタートされて、活動の種類を増やされてきたのですね。
日下さん
はい、基本的には子どもだけが来ますが、保護者だけが来て、相談にのることもあります。
寺戸
居場所を始められたきっかけを、教えていただけますか?
日下さん
シンプルですが、「困っている人がいたから」です。
最初はベビーマッサージの活動をしたのですが、その時に「居場所を作ってくれない?」と言われたんです。子育てサロンのようにママ友たちが集まって、お菓子を食べながら、家族のことや子育てのことなど自由に話ができる場所を運営するようになりました。
寺戸
最初は、親御さん向けの居場所からスタートされたんですね。
日下さん
はい、最初は親御さん向けの居場所だったのですが、困っている子どもたちも毎日来るようになりました。会館を借りて子ども向けの居場所を始めて、居場所運営に関する様々な知識を得ました。この頃から、中学生に学習支援をしていたのですが、コロナ禍になり、会館が使えなくなりました。
コロナ禍で、家を出られない子たちが増えてきたので、訪問型での支援も始めました。学校が再開し、参加する子どもが増えたので、場所を移して今の場所で居場所活動を再開しました。
寺戸
すごし場としてのスタートから、子ども食堂や学習支援を始めたのことですが、居場所活動のなかで、何かきっかけがあったのでしょうか?
日下さん
「一人で食べてる子がいてるねん。」という情報を聞いたことがきっかけで、子ども食堂をスタートしました。11月から高学年の勉強メインの居場所もはじめましたが、それは勉強がわからない子が、わからないままになっている状況を目の当たりにしたからです。「小学校卒業前に、割り算ができない」という子もいました。
多くの子どもたちが一緒になって遊んでいました。
親子をセットで支援し、子どもの「やりたい」を伸ばす
寺戸
子どもたちと関わる中で、大切にされていることはありますか?
日下さん
子どもだけの支援ではなく、親子一緒に支援するということを心掛けています。あとは、シングルのご家庭も多く、親御さんの方がしんどくなってしまっている状況も多いのですが、まず子どもたちの状況に関心を持ってもらうことが大切だと思っています。
寺戸
親御さんを支援することが、結果的に子どもたちを支援することにもなる、と。
日下さん
不登校の状態にある子どもたちに寄り添うときは、それぞれの子に合う、学びの場はどこかを一緒に考えるようにしています。学校に行くということがすべてではありません。
ただ、学校に行かなくていいよというのは簡単ですが、その子が将来一人で歩いていけるかどうかを一緒に考え、悩みを聞き、進路についての提案をします。最終的に選択するのは本人ですが、支援者という立場としてできることを子どもに伝えるようにしている。
寺戸
居場所にきている子どもたちはどのような状況なのでしょうか。
日下さん
親が仕事に行っている間、おじいちゃんおばあちゃんが面倒を見ているのですが、昼食代としてお金だけ渡されていることもあります。また入学したての1年生だと、45分の授業に集中できない子が多いです。スマホを使う子が増えて、情報がすぐ入ってくるので、集中して聞くということが苦手なようです。放課後も一人でバスに乗って習い事に行ったりしていますが、「やらされてる感」が大きいように思います。
居場所では、ちょっとしたSOSをキャッチできるように心掛けています。気になる子は、居場所に誘ったり、一緒に帰ったり、さらには保護者と接点を持つことを大事にしています。
子どもたちは、自由に過ごしています。
大人の力を寄せ集めて、地域で支える居場所づくり
寺戸
居場所を続けられていて、感じられていることはありますか?
日下さん
居場所を続けることは大変ですが、子どもと関わるのは、楽しいし、ドラマを見るより楽しいです笑。もちろん、失敗もありますが、大人に対して反発的だった子も、時間が経つにつれてだんだんと近寄ってきてくれます。
寺戸
続けているうちに、子どもたちとの関係性ができてくるのですね。最後に、今後の展望があれば教えてください。
日下さん
より一層、居場所の運営に注力していきたいと考えています。子どもたちが、のびのびできる広い場所で活動したいです。午前中は、ベビーマッサージや子育てサロン、午後は子どもたちの居場所をして、勉強のサポートも時間を区切ってしっかり教えてあげれる、そんな居場所を目指しています。
あとは、資格がないとできない支援もあるので、支援のレパートリーも増やしていきたいです。行政とのスキマ、制度の狭間を埋めるような支援をしていきたいです。
里親制度は家族で子どもの面倒を見ますが、それに対して居場所は何人かのスタッフで面倒を見ます。子どもにとって合う大人、合わない大人がいますが、複数人スタッフがいれば、誰かとは合うはずです。みんなの頑張りを寄せ集めて、地域で支えていきたいです。
寺戸
性格や価値観の異なるスタッフが複数人いることは、居場所ならではの良さで、子どもにとっても良い環境といえますね。
日下さん
その子がちょっとでもプラスになるように、「出会って良かった」と言ってもらえるような関わりをつくることを常に心に止めています。
寺戸
最後に、これから居場所を始められる方へのメッセージをお願いします。
日下さん
どんな居場所をつくりたいのか、というビジョンを持ってやることが大事だと思います。
居場所の数は、増えればいいというものではないと思います。せっかくやるなら、質の高い居場所を運営してもらえたらと思います。
子ども食堂の調理の様子です。
まとめ
日下さんは、子どもの支援だけではなく、親子一緒に支援するということを心掛けて、居場所の活動をされています。
複数人の大人の力を寄せ集めて、それぞれの子どもに合う居場所づくりをされているというお話や、「出会って良かった」と言ってもらえるような関わりをつくるというお話が印象的でした。
日下さん、お忙しい中インタビューに答えていただき、本当にありがとうございました!
日下さん。子どもたちが過ごせる居場所、親御さんたちの相談、スクサポと幅広く活動されています。お忙しい中、インタビューにお答えくださりありがとうござました!